小林公明さん 縄文文化を追究し続ける、井戸尻考古館長。富士見町は、世界に誇る縄文王国。

富士見の縄文文化を、約40年にもわたり追究し続ける井戸尻考古館長

小林公明さん
井戸尻考古館長 小林公明さん
井戸尻考古館長 小林公明さん

小林館長は、烏帽子出身、高校時代に地歴部に所属していましたが、その後富士見町役場に就職。昭和48年に井戸尻考古館が建設されてから、今日に至るまで、考古館で仕事をされています。

井戸尻考古館の設置は、昭和30年代に井戸尻遺跡が発掘され、一大ブームを巻き起こした事がきっかけでした。地域住民による井戸尻遺跡保存会が立ち上げられ、広原財産区からの寄付を受け設置されることになったそうです。その後は富士見町立の考古館として運営され、小林館長はこの地域の縄文の考古学の研究の第1人者として活躍されています。自治体レベルの考古館としては、極めてユニークな実績を残しているのです。

富士見の縄文文化の特徴は、太陰的世界観と農耕文化

井戸尻遺跡の特色を丁寧に解説してくださいました。
井戸尻遺跡の特色を
丁寧に解説してくださいました。
井戸尻遺跡の特色を
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小林館長によれば、この地域の縄文文化の特徴は、狩猟だけでなく農耕文化を有していた点とのこと。鍬や草取り鎌など農耕に使われていたと考えられる農具が出土しています。歴史の教科書によれば、農耕文化が始まると、富の蓄積が可能となり貧富や身分の差が生じた学んだ記憶がありますが、縄文人は、「必要以上には作らない、使わない」身の丈にあった生活をしていたそうです。

最近でこそ、縄文文化のイメージはだいぶ変わってきました。かつては縄文といえば、狩猟採集の原始人、弥生時代になると農耕が始まるというのが常識でした。しかし小林館長によれば、この地域の縄文文化は、初期の農耕の段階にあったことは間違いないそうです。鍬や草取り鎌など農耕に使われていたと考えられる農具が出土しています。
また、八ヶ岳山麓の縄文人の残した土器は、彼らの世界観を伝えてくれるような紋様に特徴があります。明確なメッセージが込められているのです。

小林館長によれば、それは月を中心とした太陰的世界観と呼ばれるもの。

太陽は、常に光り輝いているが、月は新月から満月、そして新月へと満ち欠けていく、これが人間の生死の本源というのが縄文人の宗教観、世界観でありました。未来永劫に続く月の満ち欠けは、世の中の万物の生成流転の原理と同様であり、月の満ち欠けに沿った暮らしをすることで、縄文人が持つ悩み、苦しみが解放されたのではないかと小林館長は語ります。特に、東の空に明け方に見えていた細い月が見えなくなり、3日の暗闇後には突如として西の空に夕方三日月が甦る。これが新しい命が誕生する生命の循環の基地で、縄文人は積極的に死を受け入れ、新しい命を生み育てる人間の生の原点を認識することができたというのです。

自ら縄文人の気持ちになって月を眺めたという小林館長の言葉には不思議な説得力があります。考古館に展示された土器の文様を眺めながら説明をしてもらうと、意味不明だったカエルや渦巻きが、ちゃんとそういう意味をもったものに見えてくるのです。

現代人は、これまで“もの”の便利さを求めてきましたが、近年になって精神的な充足についての関心が高まってきています。“もの”の追求は際限がありませんが、精神的なものはそうではありません。縄文人にとっても生きる上で大切にしたものは、精神的な側面であったということが、見つかった土器などからわかるとのことです。

日本の考古学は、ながらく出土した「もの」を中心に組み立てられてきました。しかし、このように、縄文人の「こころ」に迫り、その「こころ」に学ぶことが求められるようになってきています。井戸尻・藤内の土器群は、その「こころ」を土器に映した特異なものなのです。

富士見には世界に誇るべき縄文遺跡が残っている!

富士見には世界に誇るべき縄文遺跡が残っている
富士見には世界に誇るべき
縄文遺跡が残っている
富士見には世界に誇るべき
縄文遺跡が残っている

八ヶ岳山麓には、数多くの縄文遺跡が発見されているが、その中でも4つの中心地が、茅野、原村、北杜市大泉、そして富士見(境地区周辺)です。しかし、富士見以外の場所では、大規模な農地整備等により多くの遺跡が破壊されてしまっています。

富士見ではまだまだ多くの遺跡が残されていますが、公有地として保全されているのは井戸尻遺跡や藤内遺跡等のわずかの部分にすぎません。町内各所に残されている遺跡及びその周辺の山林を守ることができれば、世界に誇る縄文文化を後世に伝えることができる、そのような素晴らしい宝に富士見は恵まれていると語られていました。

生きた理科、歴史を学ぶことのできる井戸尻遺跡

小林館長によれば、縄文人は、今のような科学が発達していない時代において、月の満ち欠けの周期をとても正確に観察していたそう。“月”を生活の指針としていたから、自然と身についた知恵なのでしょうか?

理科という科目で、知識として“月”の満ち欠けを暗記しても何も感動がありません。しかし、月を実際に眺めながら、月と一体化した縄文人の生活を学ぶことができれば、理科、歴史、道徳といった科目で学ぶべき内容を楽しく、そして肌身で実感しながら習得することができるのではないでしょうか?
小林館長のお話をお伺いしながら、富士見の子供たちにとっても井戸尻遺跡は素晴らしい学びの場になるのではないかと思いました。

 

 

井戸尻考古館
サイト:井戸尻考古館
井戸尻考古館は、八ケ岳山麓を舞台に繁栄した縄文時代の生活文化を復元して、当時の生活様式を紹介する施設です。また、井戸尻考古館がある井戸尻史跡公園は、古代ハスをはじめとする花の名所としても知られており、多くの観光客が訪れます。

井戸尻考古館
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