村上不二子
富士見町の文化と景色を、様々な切り口で紹介しています。
2022年の暮れ、富士見駅前にある油屋の旅館だった建物が解体された。 油屋旅館の前庭に大きな木があり、来客を和ませていたという。 解体工事の途中、木は残るのだろうと思いながら見ていたのだが、数日後通りかかるとすっかり更地になっていた。 油屋旅館は、富士見駅の開設にともない、明治39年に13代当主が蔦木宿から富士見駅前に建物を移築する。多くの文人墨客が訪れる中、昭和4年の駅前大火で消失。(宿泊名簿や...
実りの秋になりました。 金色に輝く田んぼで、収穫する人たちが忙しく働く様子は、見ていて心が躍ります。 お米を脱穀した後に残る藁。 「おぼれる者は藁をも掴む」「藁にもすがる思い」、そんな言い方をされてしまう藁ですが、ちょっと目を凝らすと、様々な場面で使われていて、実はとても頼りになる存在ではないかと感じます。 脱穀後の藁が、この地域でどう使われているか探してみました。 まずは収穫時の藁 はぜかけの稲...
2021年の年末から22年2月にかけて、いつになく寒い日々になりました。 家のベランダの温度計がマイナス10度より下がる日が何日も続きました。 「寒いですねえ」「そうだねえ。だけど小さい頃はもっと寒かったなあ」「こんなもんじゃあなかったなあえ」 こんな会話を何人ものお年寄りとしたのも、今年の冬のことでした。 寒さと隣り合わせた暮らし、「凍る」を生かした暮らしがここにはあります。 眺める 至る所で、...
今、地質学的な視点で風景を見ることが大はやりだそうです。 その視点で見ると、今まで何気なく見ていた景色がちょっと別のものに見えてくるらしいのです。 富士見町の景色はどうでしょう。 この町はフォッサマグナの中に、そしてフォッサマグナの際(きわ)にあります。フォッサマグナと関わらせてあらためてこの町を眺めたら・・ 見えて来た風景を紹介します。 フォッサマグナとは。 命名したのは、あのナウマンゾウに名前...
あの犬養木堂ゆかりの場所が富士見にある。犬養さんが愛してやまなかった所で、すばらしい景色らしい。 ところが、実際に見学した人は思いの外少なく、長いこと富士見に住んでいる人たちも、「行ってみたいけど、どうやったら入れるかわからない」と言う。 私たち一般人が見学できる機会はないのか探していた矢先、何気なく手に取った富士見町観光協会の「おひさんぽ」のパンフレットに、「白林荘」とあるのが目に飛び込んできた...
乙事瓜って? 伝統野菜といえば京都や金沢を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも、この富士見町にも昔から作り継がれている、全国流通に乗らない地域独特の野菜があるのです。 その一つが「乙事瓜」。「乙事昔瓜」とも「乙事赤瓜」とも呼ばれているそうです。 「乙事」とは富士見町の由緒ある集落の名前。その乙事に由来をもつ、昔から作られている、赤い皮の瓜。それが乙事瓜です。 乙事瓜はどんな味? 特徴は何と言っ...
富士見町の多くの家では、来客から「お水ください」と言われた時、躊躇なく水道の蛇口をひねり、出てきた水をコップに受け、「どうぞ」と渡すのではないだろうか。 富士見町にはいい水がある。 それは、富士見町の地形と関係があるのだそうだ。(第2話) ※第1話はこちら 東出口湧水 開かれた地形の中にあり、ひっそりと佇んでいるような湧水である。 暑さのさなか、ここを目指してやってきて、ひんやりする水を掬って飲み...
富士見町の多くの家では、来客から「お水ください」と言われた時、躊躇なく水道の蛇口をひねり、出てきた水をコップに受け、「どうぞ」と渡すのではないだろうか。 富士見町にはいい水がある。 それは、富士見町の地形と関係があるのだそうだ。 東西を、それぞれ八ヶ岳の山脈と入笠・釜無山系に挟まれ、その間に居住地が点在する富士見町。山に降った雪や雨は、やがて川になって山麓を下り、底部にある集落を通り、底にある川に...
富士見駅前商店街が役場前道路と接する交差点を富里方面へ3軒目。そこが目指す「mountain bookcase」だ。 雨宮テーラーと茶虎飯店の間に位置するその店舗は、昔は時計店だったと聞く。一見「この場所でよかった?」と思うのだが、目を留めると、店の正面から、じわじわとワンダーランドの匂いがしてくる。
八ヶ岳から釜無川にかけ、広大な斜面が続いている富士見町。 先人たちは、八ヶ岳の湧水を利用して用水を作り、林を開墾し、石垣を積み上げ、土地をならして、八ヶ岳南麓のこの地にいくつもの棚田を作り上げてきました。 いくつかは耕地整理されましたが、新田開発された当時とあまり変わっていないのではと思われる棚田も残っています。 その一つが「池袋棚田」。 井戸尻遺跡を背にすると、遠方に甲斐駒ケ岳、鳳凰三山、はるか...
不思議な石碑 信濃境駅から富士見駅に向かって県道を500メートル程歩き、脇道を右折したすぐそばに、不思議な石碑があります。平成7年に94歳の与市さんと93歳のかぞのさんが建てたらしいものです。文章の内容をよく理解することができないのですが、2人の思いが碑文のあちこちから伝わって来るような気がして、想像をかき立てられます。 石碑のタイトルは「五味次郎兵衛オオカミ退治 其の功に依り士族となる」。書かれ...
宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」をご覧になったでしょうか。 1920年~1930年代が描かれたこの映画。終盤、結核にかかったヒロイン菜穂子さんは「私、治りたいの。二郎さんと一緒に生きたいの」と、一人、富士見にある高原病院に入院します。高原病院の場面の直前に出てくるのが、立場川鉄橋とその上を走る蒸気機関車。 そして、もう一場面。菜穂子さんは、主人公二郎からの手紙を読んでどうしても会いたくなり、病院...