蜂の子
富士見町に引っ越す前から、信州人はイナゴや蜂の子、ザザムシを好んで食べると聞いてはいました。
でも、富士見町に住み、初めて実際に食文化として残っていることを実体験しました。
近年は農薬のせいかずいぶん減ってしまいましたが、私が引っ越してきた30年前は、稲刈りの終わった田んぼに袋を持った人たちがイナゴ取りをしている姿をよく見ました。
知り合いに出されてお蚕さんのさなぎもいただきました。大切なたんぱく源だったんでしょうね。
諏訪湖のソフトクリーム屋さんのソフトには、イナゴの佃煮が何匹もさしてありました!!
初めて、蜂の子入りのおにぎりを食べたときは、本当にびっくり!
佃煮の芋虫はちょっと魚の卵みたい? うんうん、なるほどと食べていると・・・羽のついた虫も入っています。
「あ、間違って入っちゃったんだな」と思って、そっと取って見つからないように捨てたら、次から次に出てくる!?
蜂の子ってあの芋虫みたいなのだけじゃなくって育ってやつも食べるんですね。
蜂追い
ところが! もっとびっくりしたのが、その蜂の子の捕まえ方です。
蜂に目印の白い糸を付けた餌を抱かせて、その糸を追って巣を探すのだというのです。
にわかに、信じられません。
大体、どうやって蜂に糸付きの餌を抱かせるんでしょうか?
万が一、蜂が持って行ったとしても、ずーーーっとその蜂を見失わずに追いかけて行くなんて不可能でしょう???
知り合いのおじちゃんのHさんがとにかく蜂追いが好きだというので、いつか現場を見せてくれと頼んで10年ほど経ちました・・・
「蜂追い」を追いかける
そしてある日、我が家の玄関の前に一台の車が止まりました。
イカの切り身を針金につるして、木にぶら下げると言います。例のあの蜂追いの大好きなHさんです。
これは蜂追いを追いかけない訳にはいきません!
Hさんにくっついて蜂追いを見せてもらうことになりました。
まず、なぜHさんが我が家の玄関先に現れたのか?
我が家の西側にある林の方から蜂が飛んできたんだそうです。多分、この辺を通っただろうというところに蜂の好きなイカの切り身をつるして置き、蜂が来るのを待つのだそうです。
ちなみに、Hさんのような蜂追いの好きな人が追うのは、土の中に巣を作るこの地域では“スガレ”と呼ばれているジバチです。
我が家の前のイカは後で見に来るということで、我が家に来る前に印付きの餌を抱かせていた場所に移動です。
イカを吊るしたからと言って、すぐに来るものなのでしょうか???
来るんです!!
イメージしていた蜂とは違って、1㎝くらいの小さな蜂でした。
さて、どうやって蜂に印付きの餌を抱かせるのでしょうか?
イカを食べるのに夢中になっている蜂の後ろの方から、餌を持っていくと、抱くんです! びっくりですね。
つまり用意した餌のほうがイカの切り身より魅力的だということです。このエサ、何で作るのかというと、これまたびっくりなんですが蜂の子です。
これはジバチの巣だそうです。
こういた巣が土の中で大きいのもだと5段くらいになっているそうです。写真は一番上の段なので小さめ。
つまり同じジバチの子を餌にしているんですね。
ジバチの幼虫のあまたの部分を切り落として、丸めて小さなお団子状にします。
写真の小さな白い丸いものが蜂の子から作った餌で、それに細い釣り糸でビニールテープを細く裂いた紐を付けます。昔は綿で細い色を作ってそれを印にしたと聞きました。
この時はすんなり餌を抱いて飛び立ちました。
最初は警戒してすぐには抱かない蜂もいるそうです。しかも餌を抱いて飛び立っても、すぐに巣には行かずに、途中で枝にとまって糸を切ってしまう蜂もいるとの事。そりゃ、変な紐が付いている餌なんか持っていきたくないですよねーーー(って、人間的な考えでしょうか?)
Hさんによると、巣の中に異物が入るのはやはり嫌うらしく、ビニールの紐は後で巣から出されるそうです。
蜂追いのおさらいです。
まず、「多分この辺り」とあたりを付けて、何か所かにイカの切り身などを下げておきます。林に散歩に行ったときに時々見つけるイカは蜂追い人の仕業だったんですね。
後日見に行って、イカを食べられていればその場にやってきた蜂に印付きの餌を抱かせます。
そして蜂を追いかけ、途中で見失うと、その方向などから予測して2~3か所にイカを吊るして蜂が来るかどうかを見定める・・・
と、この繰り返しだそうです。
動画の中で飛んでいる蜂がわかるでしょうか?こんな感じで飛んでいきます。
林の中で高く上がってしまうとなかなか追いかけることができません。Hさんくらいの蜂追いの達人になると、私には見えない蜂の姿を追うことができるらしいです。
この日は、結局巣穴発見には至りませんでした。
見たいですね~。蜂の巣を発見して掘り起こすところ!
Hさんにお願いしているので、ドキドキワクワクしながら待っています❤
こうご期待ください。
(Written by エンジェル千代子)