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葛窪区の神楽保存会 ~集落の文化を受け継ぐ~

葛窪区の神楽保存会 ~集落の文化を受け継ぐ~

 

葛窪区の御神楽


ある時Facebookで、知り合いの栗原さんが葛窪区のお神楽に参加された記事が目に留まりました。いわゆる移住者の立場で地域の伝統的な行事に参加したことを報告されていて、何よりその視点がとても面白かったのです。

富士見町には葛窪区、乙事区、小六区の3か所でお神楽(獅子舞)が受け継がれ、町の民族文化財の指定になっています。令和3年に発行された「富士見町の指定文化財」によるとそれぞれ起源や舞、囃子詞は違います。

葛窪区のお神楽は津島社の獅子舞を、江戸時代、旅回りの獅子舞から伝授されたものが受け継がれているようです。

葛窪区誌にも記載がありました。

毎年7月15日に 悪魔を払い・村や家庭の安全・豊作を祈願する祇園祭が行われ、神殿前で獅子舞が奉納されたそうです。その後は辻舞と言って、葛窪区の要所とされる辻々(中村の石枠の辻、穀止め番所の辻、円見山の薬師堂前の辻)や、祝い事のある家、長患いをしている家や、役員など各家々の座敷に上がって舞いました。

葛窪区誌には

部落に疫病がはやり神仏にすがるよりしかたがない時代、旅人が獅子舞いで悪魔払いをすると病がなおるとのことで神楽をお願いしたと伝わる。疫病がなほつたのでそれ以来神楽を部落の行事として舞うようになつた。


昔は氏子又は若者が舞ったが其の後昭和時代になって青年会の祭典部が主催で各家庭及び道路辻舞いをし惡魔払をした。平成年間には有志で保存会をつくり舞っている。又町民祭及び学校等でも舞こともあり部落有形文化財である。獅子は女獅子。

と記載されています。

獅子舞に雌雄があるとは知りませんでした!
ネット検索ではオスは荒々しく、メスはしなやかに踊るという記述もありましたが詳しいことはわかりませんでした。

 

納涼祭での御神楽の披露

 

8月14日に葛窪盆行事納涼会があり、御神楽の披露もあるというので見学させていただきました。

葛窪区の神楽保存会
社(おやしろ)

葛窪の舞は3部に分かれており、最初の“幕の内”では、獅子頭の後ろに大きく幕が広げられて迫力のある舞です。

 

葛窪区の神楽保存会

その後、持ち手によって、幕は踊り手の背にまとめられて本舞いに移ります。この時、手には御幣(ごへい)とおんさ(鈴)が持たれます。

 

葛窪区の神楽保存会

剣の舞いでは剣に持ち替わり、舞の最後には参加者の頭上で剣を打って、お祓いをして終わります。

 

葛窪区の神楽保存会

葛窪区の神楽保存会

 

御神楽の担い手も、氏子から青年会の祭典部へ、平成になってからは保存会へ変わっているそうです。ほとんどが農業の担い手だった時代から価値観も生活様式も変化し、その中でこうした文化を受け継いでいくことのご苦労もあった事と思います。

現在では保存会は20名ほどのメンバーが活躍されているとのこと。
北原会長さんに伺ったところ、基本的には前記の祇園祭に向けて練習をなさっていたそうですが、お披露目の場を増やし一年を通して練習の場を設けたいとの希望を語っていらっしゃいました。今年は、町内の他集落のお祭りでもお披露目されるそうです。素敵なお話です。

 

葛窪区の神楽保存会

葛窪区の神楽保存会

葛窪区の神楽保存会

 

御神楽を舞った栗原さん

 

さて、この続きはお神楽にどっぷりはまってしまった栗原さんから、新たな目線で紹介していただきまね

葛窪に引っ越してきて約6年、今年からは正区民としてはじめて御神楽に参加する機会をいただきました。
色々と教えていただいた先輩方に感謝です。

千代子さん説明と重複もありますが、新参者の視点で感じたことを書いてみます。

これは葛窪(集落)に伝わるお祭で、舞手(獅子舞)に合わせて唄、太鼓、笛、15〜20人くらいで行う御神楽舞です。本番は7月に行われる「祇園祭」。当日、一隊は早朝からお宮や家々(10軒ほど)を回って家の中や庭で舞を披露します。いわば神様が厄を落としに家に訪れる。舞の後は各家でお酒や食べ物がふるまわれて、わいわいと皆で話をします。(何軒目かになると、飲んだくれてくる笑)

葛窪区の神楽保存会

葛窪区の神楽保存会

最後に、公民館で行われる敬老会で、50人くらいの先輩方(皆かつて舞をマスターしてる!)の前で新人(僕)が披露するという段取りです。

葛窪区の神楽保存会

家々(庭)を訪問するので、集落の皆がどこにいて、元気でやってるかどうかが共有されるわけです。(我が家にも来て、海外在住の姉一家が遊びに来てたので、そんなこともわかる)

葛窪区の神楽保存会

本番前の稽古(月1回。6月からは週3回)では色んな先輩が細かく指導してくれるので、この方はこういう性格なんだなあ、という事も認識できる。(会社員なら接待ゴルフとか麻雀とかに近いかも)

御神楽という(ハードな)目標があるので、よくある仕事マウントとか、そういうもの抜きにコミュニケーションが成り立つ仕組みにもなっていると感じました。

また、酒が飲めなかったり家族総ぐるみで振る舞いをしなくてもそれほど気まずいわけではない、などなど、コミュニティを維持させるため様々な仕組みが自然にできてるなあと思うことしきりでした。(もちろん時代や人手が減ったりでなかなか大変な面もたくさんあります)

一回の舞は10分弱、獅子舞の振付はかなり細かく決まっていて、なかなか覚えるのが大変でした。いっけん優雅な舞に見えますが、実は結構、というかかなり動きはハードです。マニュアルがあるわけではないので先輩の舞を見て覚えることが基本です。(最近は映像があるのでそれを見て練習できます)

僕は長らく選挙の現場に携わることが多かったのですが、一連のお祭りは、選挙カーが色んな所を回って挨拶したりふるまいを受けたりすることに近いと感じました。というか実は逆で、こういったお祭りに倣って日本の選挙のやり方ができたのかもしれません。(祭り→まつりごと=政とはよく言ったものです)

それにしても、都会に比べこちらの60代以上の方々は本当に元気と感じます。ビジネスの世界での活動がひと段落してからも、集落の仕事や農作業でやることが多いから活き活きしています。49歳の僕はまだまだひよっ子で、教えられる事ばかりです。とにかく、学ぶことの多い活動でした!

 

栗原さんの話が面白いと思って改めて経歴を読んでみると、メディア論、政治学(選挙研究)、社会学を学ばれていました。
富士見町って色々な分野で活躍されている移住者が多くって恵まれていると思います。

先祖代々この地に住みその文化や宝を継承している方々がいて、他方、よそから来たからこそ際立って見える魅力もあります。様々な目線で町の魅力を捉えて発信できる、それも富士見町のお宝の一つだと改めて思ったのでした。

葛窪区の神楽保存会

御神楽保存会の法被。かっこいい!

 

葛窪区の神楽保存会

神楽保存会・会長の北原健朗さん(右)と栗原大介さん

 

 (Written by エンジェル千代子)

ルバーブ生産組合や井戸尻応援団をはじめ、様々な団体で富士見町の活性化のために活動中